ESSAY|エッセイ

父・河崎利明 遺稿集

いぢめ

父・河崎利明 遺稿集「はとからすやまとりのこみ」より

小学校でも軍隊でもよくいぢめられた。小学校の時は金持で級長だったので悪童にひどくやっかまれた。「花、ハーナ、ハーナ」といふ。この「ハーナ」とは先生が自分をひいき(花)してゐるという意味だ。「花」の字をカタカナに分解するとヒイキになる。

皆が紺絣の和服の時、父の買って来た洋服で学校に行くと悪童がよって来て「これネルかサージか」と洋服をつまむふりをして腕をつねった。眼に涙がうかんだ。翌日から紺絣にもどった。

小学三、四年の時は悪童だったが、五、六年の時は級長になりたくてしようがない二番のやつが仲間をあつめて陰険にいぢめた。

反対に貧乏で成績が悪いSもいぢめられた。本屋の路地奥のジメジメした長屋に住んでゐた。便所はそまつな女便所だけだった。他の家はみんな男便所、女便所とあったので「ビンボ、ビンボ、穴一つ」とからかって泣かしてゐた。

軍隊の学校では文学好きで根本的に自由主義者であることを見抜かれ、右翼的硬派の学生が徒党を組んでいぢめた。

最近「いぢめ」が問題になってゐるが、昔もあったのだ。

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父・河崎利明 遺稿集「はとからすやまとりのこみ」

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