自己暗示・・・セルフサジェスション

父・河崎利明 遺稿集「はとからすやまとりのこみ」より

父・河崎利明 遺稿集

Essay|エッセイ

中学に入った。一高入学者数全国三位~四位の進学校で秀才が揃ってゐた。受験勉強などしたこともない田舎の小学校から入ったので、入学試験の成績順位はクラスの中でビリだった。此の成績が発表されたときはショックだった。田舎の小学校では全学年クラス一位だったからである。発奮して勉強し一年末の成績はクラス一位となった。

 

ところが小学校の時、家に歸って殆ど充ててゐた読書時間が殆どなくなってしまった。残念なので結局夜の睡眠時間をへらして読書に充てることにした。睡眠時間は五時間とし此の習慣は六十八歳まで続く。

これと共に何時に起きやうと思ったら必ずその時間に眼を覚ます自己暗示(セルフサジェスション)も身につけた。これは大へん便利で、夜中の三時に起きやうと、眠る時腕時計を見て心に言ひ聞かせると五分以内の誤差で必ず三時に眼を覚ます。だから目覚まし時計など買った経験もない。軍隊の時海底聴音所の所長になって、聴音機交替員が二時間毎に「第三直交替員交替します」五分後に「第二直交替員交替しました」と隊長室前で報告する時、普通の隊長は眠ったままだが自分は必ず「よし」といって、隊長は何時眠るのかと不思議がられた。私には昼寝の風習は全くなく、六十歳まで昼間眠ること、ウトウトすることなど一回もなかった。

 

森鴎外の在小倉作品中「僕はセルフサジェスションを持っているから起きたい時間に何時でも起きられる」と書いてあるのを見て鴎外を尊崇してゐるので親近感があり嬉しかった。また畏友糸園辰雄君も同じ能力を持ってゐる。

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父・河崎利明 遺稿集「はとからすやまとりのこみ」

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